ワクチンや集団免疫の時代は終わったか?
いま、テレビやインターネットで「ワクチン」や「集団免疫(しゅうだんめんえき)」というキーワードが話題になっています。本来は医学用語であったこれらのワードが、ほとんど「ワクチン崇拝」や「集団免疫信仰」のような非科学的ブームになってしまっている感があるほどで、私たちはたいへん危惧しています。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の抗原ウイルス(SARS-Vs-2)は、もうすでに突然変異を起こしており、もはや2019年に初めて出現したウイルスとは別物になっている。台湾の国立彰化師範大学とオーストラリアのマードック大学の共同研究チームが、インドから検出した新型コロナウイルスが変異を起こした事実を確認。研究チームによると、突然変異はウイルス表面に突起状の「スパイクタンパク質」受容体結合ドメイン(RBD)で確認されたということです 。抗原ウイルス(SARS-Vs-2)の多様な変異能力のために、ワクチンを開発しても突然変異ウイルスには効果がない可能性がある、ということを意味します。
ダーウィンの進化論の本質は時間・世紀が長い短いではなく、地球の全生物はけっして定数ではない、不動の固定ではなく常に生成消滅変化する変数である、ということがポイントです。宿主もコウモリからトリへ、トリからヒトへ、抗原ウイルスは、2019年12月中国武漢で初めて出現した当時とはもはやまったく別物に進化してしまっています。2020年春のウイルスを固定して開発したワクチンなど2020年末2021年初めに製品化・量産化できたとしても、進化してまったく別物となりはてたウイルスに対して、はたしてどれだけの効き目があるでしょうか?
ワクチンが感染症の発症を完全に止められるでしょうか? 残念ながら、その答えはノー。統計学的に見ても、感染症学者やお医者さんたちの意見でも、ワクチンが感染症の発症を止めることのできる確率は、わずか50パーセント(半分)程度、うまくいっても70パーセント程度であるといいます。つまり、ワクチンは「万能薬」「万能の神」ではないのです。「せめてワクチンができるまでは、コロナにかからないように気をつけよう。そして、ワクチンができたら、もう安心だ」――多くの国民が、なんとなくそう信じていたことでしょう。これは「集団免疫」とかその他のワードも含めて、マスコミでもてはやされているように、百パーセント劇的に予防できるという効果や科学的エビデンスがあるのでしょうか?
そういえば、ワクチンもなにもなかった大昔(日本史でいえば古墳時代、平安時代、ヨーロッパでいえば中世)、猛威をふるった「はやりやまい」ペスト、コレラ、いえふつうのインフルエンザさえも、ワクチンを一人も一滴も打たなかったのに、いつの間にか消え去ってしまいました。いったいなぜでしょうね。……この事実ひとつ見ても、「ワクチンさえできれば安心」というのは,ちょっとちがうかもしれない、と思われませんか?
「集団免疫」にご用心。このことばも、テレビやインターネットで広まっていて、「「社会の集団内にある程度コロナが広がったら集団の免疫ができるから、私は安心」」というふうに誤解しておられませんか? この集団免疫の実態は――
「集団免疫をするには人口の60%の感染が必要になります。イギリスの人口はおよそ6600万人ですからな、4000万人ほどの国民が感染しなければなりません。そして、それと同時に数十万人以上にもなるだろう死者をも容認しなければならないのです。結局、国民の反対が予想以上に強く、新型コロナウイルスに対する抗体(抵抗力)を国民のどのくらいの人がもっているかを調べてから再検討するということになったようです 。」
「(2020年4月、イギリス)スカイニュースは14日、政府の集団免疫戦略の根拠となったデータをすっぱ抜き、科学論争のきっかけを作った。それによると、SAGA代表のバランス氏は「集団免疫によってウイルス感染を阻止するには人口の6割に相当する約4000万人が感染する必要があり、うち、3200万人は軽症だが、800万人は重篤となる」と政府に説明したという。いかに集団免疫戦略の方が感染者や死者が多く、医療崩壊の可能性が高いかが分かる。ジョンソン首相は3月27日、新型コロナウイルス検査で自身が陽性反応だったと公表した。 」
以上の記事は、もうすでに昔の記事になっていますが、過去の事実から現在の教訓を学ぶことは極めて重要です。「集団免疫の根拠」じたいが捏造されたた非科学的なもので、データも根拠もあやしいものだった、ということです。トランプ大統領も、ジョンソン首相も、当初は経済への悪影響を懸念して、集団免疫の獲得によってウイルス封じ込めを目論み、見事に失敗したことを、よく想い起しましょう。
もう、こうなってきますと、たよりにしていた「ワクチン」も「集団免疫」も、なんだか急にたよりなくなってきましたね。そこで、一番たよりになるのが第二章以下で述べる「生体防御メカニズム」です。ちょっと聞きなれない、むつかしいことばのようですが、要は「免疫(めんえき)」「からだが本来持っている、病気に勝つしくみ」のことです。
けれども、「免疫」ということばは、その意味が狭く、本来は厳密な医学用語であったのに、あやしげな健康食品商法など、科学的根拠もはっきりしないままに世の中に出回ってしまっています。ですから、「免疫」ということばよりも「生体防御」「生体防御メカニズム」をもちいたいと思います。この本は、そのような「健康本」や「健康食品」ではありません。文章や表記こそ「ひらかな」がおおく、比較的やさしいものになってはいますが、「基本的」には「自然科学の大前提」「科学的なエビデンス(証拠)」に明確に基づいた科学書、サイエンス・ノンフィクションです。ただ、西洋医学で治らなかった病気が東洋医学で治ったとか、医者よりお母さんやおばあさんから聞いた昔の言い伝えに従ったほうが病気が治ったとか……理屈抜きでそういうことがあるのも〈事実〉です。こういう〈事実は空理空論よりもたいせつでしょう。そこで、「基本的」というとおり「基本的」には科学を中心にはしますが、西洋医学だけにとらわれず、生化学・栄養学・農学・心理療法・東洋医学・武道・民間療法等も含めて〈全体〉を俯瞰する日本で初めての全体医学の本、そしてなによりも、目の前の敵「新型コロナウイルス感染症」対策の具体的な実用書となるでしょう