海洋エネルギー
海洋エネルギー発電の原理・種類
海の潮流(いわゆる潮(しお)の流れ)は、重力が支配する宇宙である太陽系に位置する惑星地球に対して、太陽と月の重力がはたらいて起こる。太陽と月の重力で生じる周期的な変動である「潮汐」によって起こる、水平方向の海水の流れである。重力は、古典力学ではニュートンの「万有引力の法則」として有名だったが、アインシュタインの一般相対性理論の登場以降、重力は「時空の幾何学的ゆがみ」であるという知見がニュートン力学にとって代わった。よく知られているように、今では数々の観測事実によってこの一般相対性理論の正しさが証明され、定着してきている。
さて、月と太陽のこの重力で生じる「潮汐」は、潮の満ち引きによって規則的に流れるため、発電に利用する場合には予測が可能であり信頼性・実効性の高いエネルギー源となる。物理学的に言えば、太陽が今のような主系列の恒星としてとどまるかぎり、数億年以上はほぼ安定的なエネルギー源であり続ける可能性がある。単純物理学的にはそうだが、実際問題としては、さまざまな要因によって変化・変動してくる。そうだとしても、たとえば原子力発電や太陽光発電よりも安定的なエネルギー源であり続ける可能性がある。原子力発電の不安定性はよく知られているが、太陽光発電も大雨の日や夜などはほとんど太陽光エネルギーを蓄電できないであろう。その点、潮流・潮汐は雨の日も夜の時間帯も関係なく、1日24時間1年365日稼働するエネルギー源となりうる。
なお、潮の満ち引きの差(勾配)による位置エネルギーを使った発電は「潮汐力発電」と呼ばれ、潮流発電とは区別される。力学的には、潮流発電は運動エネルギーを活用し、潮汐力発電は位置エネルギーを活用する。エネルギーの生じる原因やメカニズムがまったく異なることがおわかりであろう。
また、海流は、太陽熱と偏西風などの風によって生じる大洋の大循環流であり、太陽系における地球の自転と地形によってほぼ一定の方向に流れている。流速や流量、および流路は季節などによって多少の変化はあるが、大きくは変わらず、幅100km、水深数百メートル程度と大規模で安定したエネルギー源である。
1. 潮流発電
「潮流発電は、潮の流れの運動エネルギーを利用し、一般的には水車によって回転エネルギーに変換して発電する方式である。1970 年代から技術開発が行われてきたが、これまではプロジェクトや事業の実現可能性を調査検討する程度の小規模実験段階にとどまっていた。しかし、最近になって、予測可能で安定的な再生可能エネルギーとして注目が集まっている。
潮流発電システムのエネルギー変換装置には、一般的に水車が用いられ、海水の流れる運動エネルギーをタービンの回転を介して電気エネルギーに変換する。タービンは風力発電と同様、回転軸の方向によって「水平軸型」と「垂直軸型」に分けられる。現在は、水平軸型を採用するシステムが主流となっている。
1)水平軸型タービン
海水の流れに対して水平な回転軸に取り付けた2 枚もしくは3 枚の羽根(ブレード)によって、潮流の運動エネルギーを回転運動に変え、発電機を回して発電する方式である。最も代表的な方式はプロペラ式であり、多くのプロジェクトで採用されてい。
2)垂直軸型タービン
回転軸が海水の流れに対して垂直であるタービンで、揚力を利用したダリウス式や抗力を利用したサボニウス式が代表的である。流れの方向に対する依存性が少なく、一般的にブレードの製造がプロペラ式に比べて容易であるなどの利点がある。また、潮流発電の設置形式には、海底に固定する海底設置型と浮体型がある(図6-5)」
――出典:『再生可能エネルギー技術白書』(C) NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
図6-5 潮流発電システムの設置形式(左:着定式 右:浮体式)
出典:川崎重工業資料、Scotrenewables Tidal Power ホームページ (C) Kawasaki